
米国における企業結合の届出基準額が増額
連邦取引委員会は、2025年1月10日、 ハート・スコット・ロディノ法(以下「HSR法」といいます)における届出基準額の増額を公表しました。 この基準は、連邦政府に対する事前届出を必要とする企業取引を判断するためのものです。増額された基準は、公表から30日後の2025年2月から適用され、2026年初めまで効力を有する見込みです。
また、連邦取引委員会は、新たな届出手数料及び手数料基準も同日から適用されるとしています。新しい届出基準が適用される前後に取引を行う当事者は、新しい届出基準及び手数料を基にHSR法に基づく届出要否の分析を行うことが望ましいです。
これらのHSR法上の基準変更と同時に、連邦取引委員会は、一定の役員兼任を禁止するクレイトン法第8条に適用される基準も改定する旨公表しました。
HSR法の調整後基準
取引規模要件: HSR法に基づく届出は、取引の結果として買収者が取得する被買収者の議決権付き有価証券、非法人持分又は財産の価額が126.4百万ドル超(2024年は119.5百万ドル超でした)である場合に必要となる可能性があります。取引規模が126.4百万ドル超505.8百万ドル以下の場合、下記の当事者規模要件も満たせば届出を要します。取引規模が505.8百万ドル超になる場合、当事者規模要件を満たすかどうかにかかわらず届出を要します。
当事者規模要件: 買収者又は被買収者のいずれかの年間売上高又は総資産が252.9百万ドル以上であり、かつ他方当事者の年間売上高又は総資産が25.3百万ドル以上の場合、当事者規模要件を満たします(2024年は、それぞれ239百万ドル、23.9百万ドルでした)。ただし、被買収者が製造業者ではない場合、被買収者の総資産が25.3百万ドル以上又は年間純売上高が252.9百万ドル以上でない限り、当事者規模要件を満たしません。
基準の変更は、大要下表のとおりです。
連邦取引委員会は、新しい届出基準が施行されるのと同時に、特定のHSR法に基づく届出手数料及び届出手数料の基準を調整する旨の公表も行いました。届出手数料は届出対象となる取引規模に基づいて算定されます。基準の変更は、大要下表のとおりです。
HSR法に基づく届出基準については、いくつかの例外規定があるため、本法が関係する可能性のある取引については、有資格者である弁護士に相談することが望ましいです。
役員兼任基準及び民事制裁金の増額
2025年1月10日、連邦取引委員会は、クレイトン法第8条における役員兼任禁止に関する基準額も引き上げました。第8条は、純資産額が51,380,000ドルを超える競争事業者間におけるofficer又は取締役としての兼任を禁止します。ただし、一方の会社の競争関係にある事業に係る売上が5,138,000ドルを下回る場合、兼任は禁止されません。
このアラートは、米国の企業結合規制に関心を有する日本企業等にとって有用な情報になることから、紹介する次第です。詳細は、Jones Day Alert “Increases to U.S. Merger Notification Thresholds Announced”(オリジナル英語版)も、あわせてご参照ください。
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