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ジョーンズ・デイ・コメンタリー:いまだ不透明な欧州における自動運転車両に係る製造物責任法制

欧州各国における自動運転車両に係る製造物責任に関する法制は、統一にはほど遠い状況にあります。

欧州委員会は、2018年5月8日に公表した報告書において、欧州製造物責任指令(85/374/EEC)(以下「本指令」)を更新することを意図しており、2019年半ばまでにそれに関するガイドラインを公表する予定であるとしています。

しかしながら、新たな法制が成立するまでの間、自動車メーカー及びソフトウェア会社等は、その潜在的リスクを評価するにあたり、欧州各国ごとの法制に基づき、その責任を分析する必要があります。

例えば、フランスにおける製造物責任法制は、他の欧州連合加盟国の法制と同様、本指令に基づき制定されていますが、フランス民法において、製品の製造者は、相手方との契約の有無にかかわらず、その製品に起因する損害について責任を負うとされています。「製造者」の定義は広範であり、損害を被った者は、製品全体の製造者のみでなく、その構成部品の製造者に対しても訴えを提起することができます。その点について直接判断した判例は存在しないものの、ソフトウェア会社も「製造者」に該当すると判断される可能性があります。

また、ドイツ製造物責任法においても、フランスと同様、欠陥製品の製造者又は構成部品の製造者に対して、訴えを提起することができるとされていますが、「製造者」概念につき、自動運転車両のソフトウェアの開発会社も含まれるか否かについて判断した判例は存在しません。この点は、裁判所において、自動運転システムが車両の構成要素であると判断されるのか、自動運転車両自体が単一の製品であると判断されるのかによって、結論が異なり得るものと思われます。

欧州委員会の2018年5月8日付報告書においては、「製品」、「製造者」、「欠陥」、「損害」及び「証明責任」等の法律用語について、明確化する必要がある旨述べられていますが、その背景にはこのような事情があります。

本コメンタリーは、自動運転技術に関心を有する自動車産業その他の日本企業等において、欧州における自動運転車両に関する法制の動向を理解する上で有用な情報を含むものと考えられることから、紹介する次第です。詳細は、Jones Day Commentary “Muddy Road Ahead: European Liability Legislation Remains Unclear for Autonomous Vehicles”(オリジナル(英語)版)をご参照下さい。

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