米国上院がサプライチェーンにおける強制労働の実態を明らかにするため企業監査を義務付ける法案を提出
2022年2月3日、共和党と民主党の上院議員は、特定の上場企業に詳細な年次監査の実施と連邦政府への結果開示を義務付けることで、企業のサプライチェーンにおける強制労働の利用を防止することを目的とする法案を提出しました。この取り組みは、議会において同様に超党派の支持を集めた、2021年12月にバイデン大統領がウイグル強制労働防止法に署名したことに続くものです。
2022年スレイブフリー事業認証法(以下、「本法」)は、特定の対象事業者に対して、サプライヤー、二次サプライヤー、オンサイトサービサーを含めた自らの事業において強制労働の証拠がないか毎年監査することを義務付けるものです。本法は「対象事業者」を広く定義しており、1933年証券法に定義される発行体で年間売上が5億ドル超のものが含まれます。
監査の内容は、連邦法としては異例なほど細かく、部門をまたがる従業員や経営陣へのインタビュー、人事ファイル及び外部取引先との契約書等の業務文書の確認が求められています。監査結果は、会社のウェブサイトに「目立つように」掲載され、米国労働省(以下、「DOL」)に報告され、審査されます。その後、DOLは、同法を遵守しなかった企業や強制労働の懸念を報告した企業を特定する報告書を議会に提出しなければなりません。さらに、最高経営責任者は、本法の遵守と監査報告書が企業のサプライチェーンの状況を正確に反映していることを個人として証明しなければなりません。本法は、DOLにコンプライアンス違反に対する民事賠償と懲罰的賠償をそれぞれ1億ドルと5億ドルまで追求する権限を与えており、企業幹部が故意に虚偽の証明を行った場合には、民事責任と刑事責任にさらされる可能性があります。
この法案は、議会を通過する過程で大幅に変更される可能性があります。可決された場合には、DOLは施行規則を作成することになります。
超党派の支持を得たこの法案は、国際的なサプライチェーンを持つ大企業に新たなコンプライアンス上の義務を課すものであり、当該企業のサプライチェーンに組み込まれている日本企業にも影響が生じることが予想されます。本アラートは、SDGsにかかわる米国における動向の一端を紹介するものであり、SDGsに関心を有する日本企業にも興味のあるトピックと考えられることから紹介する次第です。詳細は、Jones Day Alerts “Senate Introduces Bill Requiring Corporate Audits to Uncover Forced Labor Practices in Supply Chains”(オリジナル英語版)をご参照下さい。
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