米国証券取引委員会、キューリグ社のESG開示不備に対する調査について和解
2024年9月10日、米国証券取引員会(SEC)は、Keurig Dr Pepper Inc.のカプセル式コーヒー商品K-CUPポッドのリサイクル可能性についてのESG開示が、「不完全で不正確」であるとの嫌疑に関する行政手続について和解を行いました。SECの気候変動開示規則の先行きは不透明であり、また、SECは気候変動・ESGタスクフォースを最近解散したばかりですが、本件は、SECが環境に関する開示規制について今後も引き続き焦点を当てていくことを示しています。
ESG開示を取り巻く規制環境はいまだ流動的ですが、ESG開示に関連する訴訟や法執行は増加しています。一例をあげれば、SECの気候変動開示規則には多くの疑義が呈されており、また注目すべき動向として、SECは、執行部内の気候・ESGタスクフォースを最近解散しました。SECの発表によれば、タスクフォースの専門知識は執行部全体で横断的に利用されているということになっています。そのような動向の一方で、SECは、他のESG開示に関する法執行を引き続き推し進めており、Keurig Dr Pepper Inc.(「キューリグ社」)に対するK-Cupポッド(「ポッド」)のリサイクル可能性についての不正確であるとの主張に関する最近の手続もこれに含まれます。
2024年9月10日、SECは、キューリグ社が証券取引所法第13条(a)及びそれに付随する規則13a-1に違反して「不完全で不正確な」開示を行ったとして、同社に対し排除措置命令を発するための手続を開始しました。SECは、キューリグ社の2019年及び2020年の有価証券報告書(フォーム10-K)における、ポッドは「効果的にリサイクルできる」との記載は「不完全で不正確」であると判断しました。その理由としては、キューリグ社によるポッドのリサイクル可能性に関する試験において、ポッドはリサイクル可能なゴミとして分別することが通常できることが示されていたところ、キューリグ社は、試験に参加した2社の大手リサイクル会社からはポッドを受け入れないというフィードバックを受けていたにもかかわらず、これを開示していなかったというものです。さらに、同社の2022年の有価証券報告書ではポッドのリサイクル可能性に関する記載が無くなっていました。
SEC及びキューリグ社は、1.5百万米ドルの支払いによる和解に合意しました。
和解後、SECのパース委員はSECの見解に反対する内容の談話を公表して、これを「キューリグ社のリサイクル可能性(に関する開示)を衒学的に解釈したもの」だと指摘し、キューリグ社がリサイクル可能なプラスチックを使用し、かつ同社の試験においてポッドがリサイクル可能であることが示されていた以上、同社による記載は正確であったと主張しました。同委員はさらに、仮にキューリグ社の記載が不正確であったとしても、SECはポッドのリサイクル可能性が2019年時点における投資家にとって重大な事項であったとの主張立証を行っていない点も指摘しています。
SECは引き続きESG開示を注視しています。上場会社は、今後も一般的な問題として自社のESG開示の正確性と完全性を評価し、SECが何を投資家にとって重大な事項と見ているかについて留意する必要があります。
本アラートは、米国において開示を行う日本企業やESG開示の海外の動向に関心を持つ日本企業にとって有用な情報ですので、紹介する次第です。詳細は、Jones Day Alert "SEC Settles Charges with Keurig Over ESG Disclosures"(オリジナル英語版)をご参照下さい。
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