
AI生成物の著作物性:米国著作権局が人が著作者であるという要件を分析
人工知能(「AI」)は、著作権法の文脈において特有の課題を提起しています。AIと著作権が交差する場面で生じるさまざまな問題に対処し、明確にするために、米国著作権局は著作権とAIに関する報告書(「報告書」)を発表する準備を進めています。報告書の第1部は2024年7月に発表され、AIによって、人の外見や声のデジタルレプリカまたはディープフェイクに対処する連邦法の「緊急の必要性」が生じたと結論付けられました。
2025年1月に発表された報告書の第2部では、AIシステムによる生成物の著作権保護を取り上げ、人が著作者であるという要件の観点からAI生成物の著作物性に焦点を当てています。同第2部において、米国著作権局は、著者が作品の作成を支援するツールとしてAIを使用した場合、当該作品の著作物性を分析するには既存の法理で十分であること、すなわち、AIに固有の新しいフレームワークを発表するのではなく、著作権法は人の創作による「オリジナルの」作品のみを保護するという確立された原則に依拠することを明確にしました。そして、当該作品の著作物性の分析に際し、同局の以下のガイドラインが参考になります。
- 人の入力またはプロンプトに応じて生成された完全なAI生成物には人の著作者性が欠如している(人が著作者であるとはいえない)ため、著作物性は認められません。
- 複数のAI生成物から選択しても、1つの生成物を選択すること自体は創造的な行為ではないため、著作物性は認められません。
- 人によって作成され、その後AIによって変更された作品(AIによって強化または変更された手描きのイラストなど)は著作権の対象となりますが、著作権は結果として生じる作品の「知覚可能な人の表現」を対象とします。この点について、人が作成した素材とAIが生成した素材の選択、調整、配置も対象となる場合がありますが、AIのみが生成した要素は対象となりません。
- AI生成物に人が重要な変更を加えた作品は、その変更が「AI生成物を十分に創造的な方法で選択または配置する」か、そうでなければ「著作権保護の基準を満たす」場合、著作物性が認められます。
米国著作権局は、本年後半に報告書の第3部を発表する予定です。報告書の第3部では、すでに多くの訴訟で争われている問題、すなわち著作権で保護された作品を使用したAIモデルのトレーニング、ライセンスの検討、潜在的な責任の割り当てに焦点を当てると発表しています。
本コメンタリーは、米国のAI生成物と著作権に関する重要なトピックであり、米国においてAIを利用した著作物を提供する日本企業にも大きな影響を有すると考えられることから紹介する次第です。詳細は、Jones Day Commentary “Copyrightability of AI Outputs: U.S. Copyright Office Analyzes Human Authorship Requirement”(オリジナル英語版)をご参照ください。
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