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Global Legal Update

Global Legal Update Vol. 102 | 2024年4月号

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

ESG (環境・社会・ガバナンス)

三度目の正直:EUにおけるサステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令の採択への動向

Third Time's a Charm: EU Moves to Approve the Sustainability Due Diligence Directive

2024315日、欧州理事会は、企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令案(Corporate Sustainability Due Diligence Directive CS3D)を採択しました。指令案はEU域内の企業及びEU域内で事業を行うEU域外の企業に対し広範な影響を及ぼすデュー・ディリジェンス及びガバナンスに関する義務を含むものです。CS3Dについては、20231214日に「政治的合意」が得られたとの発表がなされた後も二度にわたり採択に至っていなかったところ、2024315日の欧州理事会でついに採択されました。

これにより、決定した文言については欧州議会による形式的な採択を残すのみとなりました。欧州理事会により採択された改訂版の文言は、EU各国による時として相矛盾するような修正の要求を盛り込もうと試みたもので、概要は、以下のとおりです。

  • 対象企業の範囲:EU域外の企業については、過去2事業年度のそれぞれにおいて、EU域内で450百万ユーロ超の純売上高を連続してあげている場合、CS3Dを遵守する義務が生じます。EU域内の企業については、上記基準に加えて、平均して1,000人超のフルタイム相当の従業員をかかえている場合にはCS3Dを遵守する義務が生じます。
  • 段階的施行:対象企業はその規模(従業員数及び全世界での売上高)に応じて今後3年ないし5年の間に段階的に(すなわち最短で2027年から)CS3Dの遵守が求められるようになります。
  • 実体的要件:対象企業は、ビジネスパートナーに対するデューデリジェンスの実施を含む、具体的に定められた多数の煩雑な要件を遵守する必要があります。
  • 責任:CS3Dの主要な条項の故意又は過失による不遵守により第三者の権利を侵害した場合、対象企業はEU各国の法制に基づき第三者責任を負うこととなります。
  • 法執行及び罰則: EU加盟国は規制当局にCS3Dを執行をする権限を付与することが求められ、その遵守と最大で全世界での売上の5%に相当する金額の制裁金を科すことを命じることが可能となります。
  • 金融セクターへの適用:限られた例外を除き、銀行を含む金融機関もCS3Dを遵守することが求められます。

デュー・ディリジェンス及びガバナンスに関する義務は第三者との契約関係への広範な波及効果を及ぼすことから、CS3Dは、対象となる企業のみならず対象外の企業にも広範囲にわたる影響を及ぼすこととなります。EU域内で事業活動を行う全ての企業は、CS3Dの適用対象となるのか、いかなる情報を提供しなければならないのか、CS3D遵守のためにいかなる対応、手続きを準備しなければならないのかを十分に理解する必要があります。

 

サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

 

中国、データの越境移転に関する規定を最終決定

China Finalizes Provisions on Cross-Border Data Transfer

中国当局は、データと個人情報の越境移転について定める新しい規制とガイダンスを公表し、これにより多くの多国籍企業にとって手続きとコンプライアンスの負担が大幅に軽減されることになりました。

2024322日、中国サイバースペース管理局は、データの越境移転の促進と標準化に関する規定(「本規定」)と、セキュリティ評価および標準契約に関するガイドラインの更新(総称して「本ガイドライン」) を公表し、直ちに施行されました。本規定と本ガイドラインは、データの越境移転に関する要件を明確にし、緩和しています。

データの越境移転の追加手続き要件の免除

これまで個人情報を海外に移転する場合、データ取扱者は安全評価に合格する、標準契約を当局に届け出る、または個人情報保護の認証を受ける必要がありました。本規定に基づき、データ取扱者は、次の状況ではそのような要件から免除されます。

  • データ取扱者が処理中に中国から個人情報または「重要データ」を取り込まない限りにおいて、中国国外から輸入された個人情報の再輸出
  • 個人との契約の締結または履行のための個人情報の移転
  • 人事管理のための従業員の個人情報の移転
  • 緊急時に生命および財産を守るための個人情報の移転
  • 重要情報インフラの運営者(「CIIO」)ではないデータ取扱者による当年度100,000人未満の機微情報ではない個人情報の移転
  • 登録されたデータ取扱者による自由貿易試験地域のネガティブリストに記載されていない地域におけるデータの移転、および
  • 国際貿易、国境を越えた輸送、学術協力、国境を越えた製造、およびマーケティングから生成されたデータに個人情報または「重要データ」が含まれていない場合(関係当局から通知されたり、公表されない限り、そのデータは「重要データ」ではありません)。

追加の手続き要件が適用される場合

例外を除き、次の場合には安全評価が必須です。(i)CIIOが個人情報または「重要データ」を移転する場合、(ii)CIIO100万人を超える「重要データ」または個人情報(当年度) を移転する、または10,000人を超える機微情報を移転する場合

例外を除き、以下の場合には、標準契約または認証が必要です。非CIIO(i)当年度に10万人を超え100万人未満の個人情報を移転する場合、または(ii)10,000人未満の機微情報を移転する場合

次のステップ

本規定と本ガイドラインによりコンプライアンスの負担が大幅に軽減されるため、企業はデータの越境移転を評価し、今後どのような要件を満たす必要があるかを判断する必要があります

 

独占禁止法・競争法

英国のハウスメーカー、即時の規制介入は免れるも、情報交換に関する新たな精査に直面
UK Housebuilders Avoid Immediate Regulatory Intervention, but Sector Now Faces Fresh Scrutiny on Information Exchanges

商事・不法行為訴訟

ニューヨーク州の食品広告規制:州による新たな規制の一環か?
New York's Recipe for Food Marketing: Next Course of Restrictive State Actions? 


事業再編・倒産

シンガポール国際商事裁判所が、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際倒産モデル法(シンガポール版)に基づき、初めて外国倒産手続(インドネシア)を承認

Singapore International Commercial Court Issues First Decision on Recognition of Cross-Border Bankruptcy Cases under Model Law

テキサス州連邦破産裁判所:債務者が有するLLC契約上の非金銭的権利(議決権等)はオートマティック・ステイによって保護される財団に帰属する財産に含まれると判断

Texas Bankruptcy Court: Debtor's Non-Economic Rights Under LLC Agreement Are Estate Property Protected by Automatic Stay


サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

米国大統領令により、特定の国への個人データの販売または移転が制限される

Executive Order Limits Sale or Transfer of Personal Data to Certain Countries

 

カリフォルニア州、子供のプライバシーをさらに保護するためのカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)修正案を提案

California Proposes CCPA Amendments to Further Protect Children's Privacy

 

カリフォルニア州と連邦取引委員会(FTC)が個人情報の販売を伴う執行措置を発表
California and FTC Announce Enforcement Actions Involving the Sale of Personal Information

 

ESG (環境・社会・ガバナンス)

ペットボトル入りミネラルウォーターに関する「グリーンウォシュ」を争うクラスアクションが本案審理へ

Class Action "Greenwashing" Bottled Water Lawsuit Survives Motion to Dismiss in New York Federal Court

 

フィナンシャル・マーケット

米国証券取引委員会が気候変動関連ディスクロージャー・ルールの内容を最終決定

SEC Finalizes Climate Disclosure Rules

米国金融犯罪捜査網(FinCEN)が新設法人に係る実質的所有者情報報告期限の延長を最終決定-当事務所による昨年9月発行のホワイト・ペーパーの続報

FinCEN Issues Final Rule Extending Beneficial Ownership Information Reporting Deadline for New Entities


訴訟・紛争解決

国際的な判決執行の新たな枠組み:英国の2019年ハーグ条約への加盟

New Global Enforcement Regime: UK Signs Up to 2019 Hague Convention


政府規制

気候変動関連ニュースレター(2024年第一四半期号)

The Climate Report | First Quarter 2024

英国金融行為規制機構(FCA)がサステナビリティ開示要件と投資ラベル制度を公表

UK FCA Publishes Sustainability Disclosure Requirements and Investment Labels


ヘルスケア・ライフサイエンス

バイタルサインデジタルヘルス法アップデート(2024年冬号)

Vital Signs: Digital Health Law Update | Winter 2024


知的財産

EU統一特許裁判所(UPC)が初の訴訟件数統計を発表

Unified Patent Court Publishes Its First Case Load Statistics

8か月以内に完了:欧州特許庁(EPO)は新たな迅速異議申立て手続のスケジュールを設定

Finish in Eight Months: The EPO Sets Timeline for New Accelerated Opposition Practice

英国最高裁判所、アマゾンの商標権侵害の上告を棄却

UK Supreme Court Rejects Amazon's Trademark Infringement Appeal


調査・企業犯罪

米国司法省(DOJ)、新たな内部告発プログラムと執行の取組を発表

DOJ Announces New Whistleblower Program and Enforcement Initiatives

知的財産に焦点を当てて、カリフォルニア州北部地区連邦検事事務所が独自の内部告発パイロット・プログラムを開始

With a Focus on Intellectual Property, NDCA Launches Its Own Whistleblower Pilot Program


M&A

米国デラウェア州衡平法裁判所がデラウェア州法人からネバダ州法人への組織変更につき「完全な公平性(Entire Fairness)」の基準を適用

Court of Chancery Applies Entire Fairness Standard to Conversion of Delaware Corporation to Nevada Corporation

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