インサイト

RadicalChangestoEuropesProductLiabilityRul

EUの製造物責任法の重大な改正

EUの製造物責任法の重大な改正により、訴訟件数の増加が予想されます。

2024年11月18日、欧州連合(以下「EU」)は、2026年12月9日以降に市場で販売される製品または提供される役務に適用がある新たな製造物責任指令(以下「PLD」)を公表しました。EU加盟国の国内法へのPLDの反映は、同日までに完了する必要があります。

訴訟上の観点からは、将来的には、原告は「合理的と思われる」主張を根拠として、欧州裁判所に対し証拠の開示を命じるよう求めることができる可能性があります。さらに、特定の事情の下では、原告は欠陥を立証する必要はなく、欠陥の「可能性が高い」ことを示すことのみにより、推定に依拠できるようになります。詳細は、Jones Day Commentary “EU新製造物責任指令案による立証責任の転換”(2023年11月7日)をご覧ください。

その他の変更点としては、「製品」の定義の拡大(デジタル製造による電子ファイルやソフトウェアへの拡大)、輸入業者などへの責任の拡大、発症までに時間を要する身体傷害における25年間への時効の延長などがあります。

この新しいPLDは、EUの製造物責任法の画期的な改正です。EUは、これらの法が市場で流通する製品の安全性と責任を強化し、人工知能(AI)やデジタル技術による製品などの新興技術によってもたらされる複雑性の増大に対処できると考えています。なおAI責任指令に関する提案は、まだ採択されておりません。

EU加盟国の大半は、EU全域での集団的救済手段の採択を想定した代表訴訟指令を導入済みです。訴訟収益の一部を対価として訴訟当事者に資金を提供する、第三者による訴訟費用提供(Third-party litigation funding、以下「TPLF」)がEUで勢いを増しています。特に集団訴訟の文脈におけるTPLFに対する懸念としては、利益相反、訴訟費用の増加、原告団体における不審な動機などがあります。こうした懸念から、EU全域で、資金提供を受けた訴訟における透明性、公平性、純粋な消費者保護を確保するためのより強力な規制を求める声が高まっています。

企業は、EUの規制強化によるリスクを認識する必要があり、特に、新たな集団的救済のメカニズムと規制のないTPLFが複合した場合におけるリスクを認識すべきです。

本アラートは、EUにおいて製品を輸出販売する日本企業にとって重要なトピックと考えられることから紹介する次第です。詳細は、Jones Day Alert “Radical Changes to Europe's Product Liability Rules Adopted” (オリジナル英語版)をご参照下さい。

ジョーンズ・デイの出版物は、特定の事実関係又は状況に関して法的助言を提供するものではありません。本書に記載された内容は、一般的な情報の提供のみを目的とするものであり、ジョーンズ・デイの事前の書面による承諾を得た場合を除き、他の出版物又は法的手続きにおいて引用し又は参照することはできません。出版物の転載許可は、www.jonesday.comの“Contact Us”(お問い合わせ)フォームをご利用ください。本書の配信、および受領により弁護士と依頼人の関係が成立するものではありません。本書に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、当事務所の見解を反映したものではありません。