Global Legal Update Vol. 109 | 2024年11月号
ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。
サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護
カリフォルニア州、AIコンテンツの開示を義務付けるAI透明性法を制定
California Enacts AI Transparency Law Requiring Disclosures for AI Content
2024年9月19日、カリフォルニア州で、消費者が、画像、動画、音声コンテンツ、またはそれらの組み合わせのコンテンツが生成AIを使用して作成または変更されたかどうかを判断できる透明性メカニズムを創出するカリフォルニア州AI透明性法(SB 942)が成立しました。
SB 942は、カリフォルニア州内でアクセスされる生成AIシステムを作成、コーディング、またはその他の方法で生み出す月間訪問者数またはユーザーが100万人を超える人々(対象プロバイダ)に新たな義務を課し、公開可能な検出ツールを提供し、生成AIによって作成されたコンテンツについて特定の開示を行うことを義務付けます。
SB 942は2026年1月1日に施行され、対象プロバイダは、(1)対象プロバイダの生成AIツールが、(i)ユーザーによりアップロードまたはリンクされたコンテンツが、対象プロバイダ自身の生成AIシステムにより作成されたか否かを検出し、(ii)そのコンテンツが対象プロバイダ自身の生成AIシステムにより作成されたことを表示することを確認し、(2)生成AIプラットフォームのライセンシーとの契約が新しい透明性要件に準拠しているか否かを見直すことが必要となります。また、生成AIシステムのライセンシーは、対象プロバイダに対する義務を見直し、SB 942に基づく差止めに注意することが必要となります。
EU、ハードウェアおよびソフトウェア製品に対する広範囲なサイバーセキュリティ要件を制定
EU Enacts Broad Cybersecurity Requirements for Hardware and Software Products
2024年10月10日、EUサイバーレジリエンス法(CRA)がEU理事会で採択されました。CRAはEU市場に投入されるデジタル要素を備えたハードウェアおよびソフトウェア製品を提供する事業者に幅広いサイバーセキュリティ要件を課す初めての法律です。
コネクテッドプロダクトのサイバーセキュリティを強化し、ハードウェアとソフトウェアの脆弱性に対処し、EUをより安全で回復力のある地域にすることを目的として、CRAは以下1から5の内容を定めています。
1.製造業者に5つの主要なカテゴリの義務を課しています。これらの義務には、適合性評価、製品ドキュメンテーション、顧客サポート、サイバーセキュリティリスク評価、脆弱性報告が含まれます。とりわけ、脆弱性の報告について、製造業者は、検出後24時間以内に「積極的に悪用されている脆弱性」をEUサイバーセキュリティ機関(ENISA)に開示する必要があります。さらに、適合性評価を満たす製品には、CEマークを付ける必要があります。
2.輸入業者は、製造業者が義務を果たしていること、例えばすべての必須要件が満たされていること、適切な適合性評価が実施されていることなどを確認する必要があります。さらに、販売業者は、製品にCEマークが付いていること、および製造業者が特定の義務を遵守していることを保証する義務があります。
3.デジタル部品を含む製品を、デフォルト(Default)、インポータント(Important)、クリティカル(Critical)の3つのカテゴリに分類し、インポータントに該当する製品はさらにクラスI製品とクラスII製品に分類されます。この分類は、各製品カテゴリがもたらすリスクと潜在的な影響のレベルに合わせてセキュリティ対策を講じさせることを目的としています。
4.自動車、医療機器、in vitro製品、認定航空機器など各分野における法律の規制対象となっている特定のコネクテッドデバイスは、CRAの対象外となります。
5.加盟国に市場監視機関の設置を義務付けます。CRAの要件に準拠しなかった場合の罰金は、1,500万ユーロまたは世界の年間売上高の2.5%に達する可能性があります。
CRAは、EUの官報に掲載されてから20日後に発効し、発効から36か月後に適用されますが、一部の規定はより早い段階で適用されます。CRAの対象となる企業は、CRAがもたらす広範囲にわたる法改正に備え、早急に準備を開始することをお勧めします。
その他、2024年10月は以下の情報をAlert/Commentary 等としてお伝えしています。
独占禁止法・競争法
米国司法省と連邦取引委員会、ハート・スコット・ロディノ法(HSR)の合併の事前届出要件を拡大する最終規則を発表
DOJ and FTC Release Final Rule Expanding HSR Premerger Filing Requirements
商事・不法行為訴訟
カリフォルニア州、類例の無い洋服リサイクル法を制定
California Enacts First-of-its-Kind Clothing Recycling Law
サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護
オーストラリア、待望のプライバシー法改革の第一弾を公表
First Tranche of Australia's Much Anticipated Privacy Law Reforms Revealed
フィナンシャル・マーケット
EUの第6次自己資本要求指令(“CRD VI”)、金融機関に対しなお一層ESGに係るリスク・マネジメントに注力するよう要求
CRD VI Requires Banks to Focus Even More on ESG Risk Management
訴訟・紛争解決
集団訴訟における衡平法上の裁判所の権限の限界に関する判断の動向(Law360)
A Class Action Trend Tests Limit Of Courts' Equity Powers (Law360)
フランス最高裁判所、契約違反による第三者への損害賠償責任に対し新たな制約を設定
French Supreme Court Sets New Boundary to Liability Toward Third Parties
ESG (環境・社会・ガバナンス)
スペイン、洋上風力発電を推進する法令を整備
Game Changer: Green Light for Offshore Wind in Spain
保険補償
ハリケーンHelene(ヘレン)による損失及び残る2024年のハリケーン・シーズンにおける保険補償の最大化
Maximizing Insurance Recoveries for Hurricane Helene Losses and the Remainder of the 2024 Hurricane Season
知的財産
明細書の適合に関する欧州特許庁の拡大審判部への付託の撤回
A Rollback on Referral to the EBA Regarding Adaptation of Description
米国の実務家のための中国の営業秘密に関する紛争入門(Law360)
Primer On Chinese Trade Secret Disputes For U.S. Practitioners (Law360)
連邦最高裁判所、特許期間調整と自明型二重特許との相互作用に関するCellect社の請求を却下
Supreme Court Denies Cellect Petition on Interplay Between PTA and ODP
調査・企業犯罪
フランス、人権デューデリジェンス規制にかかる注意義務に関する紛争を専門的に取り扱う裁判所の部門を創設
Creation of a Specialized Court Division to Handle Duty of Care Disputes in France
米国司法省、AIと新興技術に焦点を当てた企業コンプライアンス・プログラム・ガイダンスをアップデート
DOJ Updates Corporate Compliance Program Guidance With a Focus on AI and Emerging Technologies
イリノイ州北部地区連邦検事局(NDIL)、組織の不正行為に関する個人の自己開示を促すパイロット・プログラムを開始
NDIL Launches Pilot Program to Encourage Individual Self-Disclosure of Organizational Misconduct
上訴審訴訟
米国第二巡回区控訴裁判所、外国政府所有の法人につきコモンローに基づく主権免除を否定
Second Circuit Denies Common-Law Sovereign Immunity for Foreign State-Owned Entities
労働・人事
カリフォルニア州、最新の競業避止義務に関する法律の最初のケースにおいて使用者が勝訴
Employer Prevails in First Test of California's Newest Noncompete Law
イリノイ州、雇用判断におけるAI活用に関する広範な法制を可決した2番目の州となる
Illinois Becomes Second State to Pass Broad Legislation on the Use of AI in Employment Decisions
証券訴訟・証券法規制執行
米国証券取引委員会及び株主原告は、「AIウォッシング」に引き続き焦点を当てる
SEC's and Private Litigants' Continued Focus on "AI Washing"
税務
米国:エネルギー生産に係る高度製造クレジット(Advanced Manufacturing Production Credit)の要件が最終規則で明確化
Final Regulations Clarify Requirements for the Advanced Manufacturing Production Credit
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