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効果的なデューデリジェンス / Effective Due Diligence

新たな投資を行う企業は、対象となる企業や契約相手方等、関連する事実・状況の調査の要否・範囲を決定する必要があり、このことは、米国への投資を検討する日本企業についても同様です。特に、米国には日本と異なるビジネス慣行や規制等が存在するため、取引から生じうるリスクを明確に理解する必要性が高いといえます。

この調査を「デューデリジェンス」といい、通常、取引の条件等を規定する契約書の交渉と並行して実行します。デューデリジェンスの機会をどの程度与えられるかは、案件により異なりますが、日本企業は、弁護士その他外部専門家の支援のもと、この機会を活用することが望まれます。

その際、重要なポイントは、取引から生じうる実質的かつ重要なリスクに自ら着眼するとともに、弁護士等外部専門家にも、必要に応じ、重要なリスクに焦点を当てさせることです。

弁護士等によるデューデリジェンスが行われると、多くの場合、調査対象の状況等を詳述した報告書が提出され、その中において、調査対象の問題点が洗いざらいリストアップされてくることがあります。しかし、詳細な報告が、本当に知っておくべきことを常に教えてくれる訳ではありません。

このような場合、必要とすべきことは、特定の専門分野についての豊富な知識経験を有する専門家の焦点を絞ったアドバイスです。例えば、調査対象に紛争が存在することが判明した場合には、特定の紛争類型に関する豊富な経験を有し、和解金額を適切に見積もることができる訴訟弁護士のアドバイスが有用です。また、特別な法規制が存在する事業分野については、既存の規制内容を説明できるだけではなく、規制が将来どのような方向に変化するかについての洞察力をも有する専門家が必要とされます。あるいは、労働協約おけるチェンジ・オブ・コントロール条項が将来の事業計画にどのような影響を与えるかを評価することができる労働法の専門家や、メキシコに工場を持つ米国企業の株主となった場合において汚職に関して生じうるリスクについて説明できる腐敗防止規制の専門家が必要となる場合もあります。

以上は単なる例示にすぎません。必要とされるアドバイスの内容は、取引の規模や性格、関連する法規制の内容等により異なってきます。例えば、上場会社の買収においては、閉鎖会社の買収とは異なった、より多くの課題が生じます。

なお、このアプローチは必ずしも高額の費用を要するものではありません。むしろ、真に問題となるリスクに焦点を当てることにより、調査対象のより深い理解につながり、結果的に費用と時間の両方を節約することができます。ただし、そのためには、依頼をする弁護士その他外部専門家に、自社の事業内容及び投資目的について深い理解を持たせることが必要です。このような理解がなければ、外部専門家は、真に重要なリスクを発見することも評価することもできないからです。

米国の法制度はかなり複雑ですが、不明確な制度を有している他の諸国よりも透明性があり、予測可能性も高いといえます。その意味で、リスクを管理することは可能であり、「本当のリスク」に焦点を絞ることは、効果的といえます。あらゆる案件について最先端の専門家のアドバイスが必要とはいえませんが、このようなアドバイスを求めうることを常に意識し、米国における投資を積極的に行うことを、強くお勧めします。