Global Legal Update Vol. 107 | 2024年9月号
ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。
政府規制
CFIUS(対米国投資委員会)年次報告書が示唆する罰則の増加と取引の審査における効率化
CFIUS Annual Report Touts an Increase in Penalties and Efficiency in Transaction Reviews
CFIUSの最新年次報告書によれば、近年に比べ届出件数自体は減少しているものの、罰則の増加と国家安全保障に焦点を当てた取引審査に関連する執行ツールの使用の増加が強調されています。
対米国外国投資委員会(以下「CFIUS」といいます。)は最近発表した年次報告書において、2023年に審査された取引に関するデータと注目すべき動向の概要を公表しました。報告書によれば、CFIUSが引き続き取引当事者のクロージング後の事業活動を監視するために軽減合意を活用していることを示しており、報告書には軽減措置の事例集も含まれています。また、報告書はCFIUSの規制や軽減合意の違反に対する民事制裁金の使用が増加していることも示しており、これは企業が取引を計画し、また軽減合意上の義務を履行する際に考慮すべき動向といえます。
2023年以前、CFIUSの歴史の中で民事制裁金が課されたのは2件だけでした。しかし、2023年には、CFIUSは軽減合意の重要な規定への違反に対して4件の制裁金を課しました。また、CFIUSは義務的な届出条項の不遵守に関する初めての正式決定を行いました。
CFIUSは申告対象となる取引について109件の申告を受理しましたが、これは2019年以来最低の届出件数であり、この減少についてCFIUSは2023年の世界規模での企業結合の減少によるものとしています。さらに、通知の件数は18%以上減少し、特に任意での通知の減少が顕著です。義務的届出の件数は2023年にはわずかに増加し、2022年と2021年には29%未満だったのに対して、届出全体の3分の1になりました。
CFIUSによれば審査効率は改善しており、2022年には23%だった届出の取下げ及び再提出の割合が5年ぶりに減少に転じ、2023年には18%となったことをあげています。また、一次審査(届出形式により30日又は45日)で承認がなされた件数は2022年の58%から2023年には66%となりました。
CFIUSは2023年に36件の軽減合意を締結し、2023年末時点で246件の軽減合意がモニタリング中となっています。モニタリング手段には、立入調査、取引当事者や第三者からの報告、潜在的な違反の調査、是正措置の監督等が含まれます。
この報告書を通じて、また上級の担当者による公的な発言、民間セクターへの働きかけ、近年の罰則の利用及び罰則権限の強化案を通じて、CFIUSはモニタリング及び法執行の強化を示唆しています。取引当事者は、取引リスクの分析及び取引の計画に関連して、これらの傾向並びにCFIUSの法律上の権限及び政治的な役割が高まっていることを十分に考慮する必要があります。
その他、2024年8月は以下の情報をAlert/Commentary 等としてお伝えしています。
独占禁止法・競争法
EC(欧州委員会)が外国補助規制による市場の歪みの評価に関するガイドラインを発行
The EC Issues Guidance on Assessing Market Distortions Under the Foreign Subsidies Regulation
事業再編・倒産
米国連邦倒産法第15章における外国倒産手続の承認は形だけのものではない - 外国主手続及び外国従手続の承認に係る近時の傾向
Chapter 15 Recognition Is No Rubber Stamp: Recent Trends Regarding Foreign Main and Nonmain Recognition
ESG(環境・社会・ガバナンス)
オーストラリアの義務的気候変動開示法制
Coming Soon: Mandatory Climate Disclosure Laws in Australia
米国におけるESG法制の展開と違反のリスクがもたらす新たな捜査の可能性
Shifting ESG landscape and misconduct allegations present new frontier for investigations in the United States (Global Investigations Review)
フィナンシャル・マーケット
第6次自己資本要求指令(“CRD VI”)の下における金融機関のガバナンス - EU域内の統一的要件
Governance Under CRD VI: Harmonized EU Requirements
訴訟・紛争解決
取締役への警鐘:英国裁判所による新たな「取引上の権限濫用」法に基づく多額の賠償責任判決
Directors Take Note: English Court Awards Substantial Judgment Under New "Trading Misfeasance" Law
オーストラリアのプロジェクトにおける誤導又は詐欺的行為に基づく請求
Misleading or Deceptive Conduct Claims on Projects in Australia
政府規制
米国財務省が不動産投資に関するCFIUS(対米国投資委員会)の審査権限の拡大を提案
Treasury Proposes Expansion of CFIUS Real Estate Review Authority
知的財産
AIとディープフェイク: 米国著作権局、連邦デジタルレプリカ法の制定を要請
AI and Deepfakes: U.S. Copyright Office Urges Federal Digital Replica Law
エピトープクレームは欧州特許庁において存続
Epitope Claims Live On at the European Patent Office
調査・企業犯罪
DOJ(米国司法省)が報奨金付通報パイロットプログラムを開始
DOJ Announces Corporate Whistleblower Awards Pilot Program
M&A
ベルギーにおける取締役の不法行為責任に関する最新改正
Directors Beware: How to Navigate Belgium's Latest Tort Liability Changes
プライベート・エクイティ
米国金融犯罪捜査網(FinCEN)が企業の実質的所有者の報告義務は解散した法人にも適用されることを公表
FinCEN Clarifies Application of Beneficial Ownership Reporting Rules to Dissolved Entities
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