Global Legal Update Vol. 110 | 2024年12月号
ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。
訴訟・紛争解決
EUの製造物責任法の重大な改正
Radical Changes to Europe's Product Liability Rules Adopted
EUの製造物責任法の重大な改正により、訴訟件数の増加が予想されます。
2024年11月18日、欧州連合(以下「EU」)は、2026年12月9日以降に市場で販売される製品または提供される役務に適用がある新たな製造物責任指令(以下「PLD」)を公表しました。EU加盟国の国内法へのPLDの反映は、同日までに完了する必要があります。
訴訟上の観点からは、将来的には、原告は「合理的と思われる」主張を根拠として、欧州裁判所に対し証拠の開示を命じるよう求めることができる可能性があります。さらに、特定の事情の下では、原告は欠陥を立証する必要はなく、欠陥の「可能性が高い」ことを示すことのみにより、推定に依拠できるようになります。詳細は、Jones Day Commentary “EU新製造物責任指令案による立証責任の転換”(2023年11月7日)をご覧ください。
その他の変更点としては、「製品」の定義の拡大(デジタル製造による電子ファイルやソフトウェアへの拡大)、輸入業者などへの責任の拡大、発症までに時間を要する身体傷害における25年間への時効の延長などがあります。
この新しいPLDは、EUの製造物責任法の画期的な改正です。EUは、これらの法が市場で流通する製品の安全性と責任を強化し、人工知能(AI)やデジタル技術による製品などの新興技術によってもたらされる複雑性の増大に対処できると考えています。なおAI責任指令に関する提案は、まだ採択されておりません。
EU加盟国の大半は、EU全域での集団的救済手段の採択を想定した代表訴訟指令を導入済みです。訴訟収益の一部を対価として訴訟当事者に資金を提供する、第三者による訴訟費用提供(Third-party litigation funding、以下「TPLF」)がEUで勢いを増しています。特に集団訴訟の文脈におけるTPLFに対する懸念としては、利益相反、訴訟費用の増加、原告団体における不審な動機などがあります。こうした懸念から、EU全域で、資金提供を受けた訴訟における透明性、公平性、純粋な消費者保護を確保するためのより強力な規制を求める声が高まっています。
企業は、EUの規制強化によるリスクを認識する必要があり、特に、新たな集団的救済のメカニズムと規制のないTPLFが複合した場合におけるリスクを認識すべきです。
その他、2024年11月は以下の情報をAlert/Commentary 等としてお伝えしています。
事業再編・倒産
刮目せよ:英国高等法院におけるCineworld事件の審理に債権者の関心が集まる
Take Your Seats: Cineworld Draws an Audience in UK High Court
サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護
NIS 2 指令、EU加盟国における移行期間が終了
NIS 2 Directive: Transposition Period is Up for EU Member States
フィナンシャル・マーケット
欧州理事会による上場法(Listing Act)の承認:債券の発行体にとって歓迎される法改正
Approval of the Listing Act: Welcome Changes for Issuers of Debt Securities
訴訟・紛争解決
詐欺防止不履行罪:英政府による実施すべき方策に関する指針の発表
Failure-to-Prevent-Fraud Offense: UK Government Publishes Guidance on Required Policies
気候変動事案の画期的な判決の取消し:ハーグ控訴裁判所がシェルに二酸化炭素の排出削減を命じた判決の取消し
Landmark Climate Change Case Overturned: The Hague Court of Appeals Overturns Ruling Ordering Shell to Reduce CO2 Emissions
政府規制
EU地政学リスクアップデート – 主要な政策・法令の展開(No. 117)
EU Geopolitical Risk Update - Key Policy & Regulatory Developments No. 117
知的財産
フランスの弁護士秘匿特権: 弁護士と特許・商標弁理士のみ対象、社内弁護士は対象外
France's Legal Privilege: Only for Attorneys-at-Law and Patent/Trademark Attorneys; Not (yet) In-House Counsel
ドイツの弁護士秘匿特権: 社内弁護士が知っておくべきこと
Germany's Legal Privilege: What In-House Counsel Need to Know
ロゴは禁止: 故意による商標侵害の申立てについて陪審がペンシルバニア州立大学に有利な判決
No-Go on the Logo: Jury Finds in Favor of Penn State on Willful Trademark Infringement Claims
統一特許裁判所: 中小企業においても魅力的な裁判所
The Unified Patent Court: Also an Attractive Jurisdiction for SMEs
統一特許裁判所: 移行期間前の国内訴訟により特許権者は締め出されない
UPC: Patentees No Longer Locked Out by Pre-Transitional Period National Litigations
労働・人事
敗訴した申立人の裁判費用の支払を制限するオーストラリアの法律が雇用差別訴訟を煽る
Australian Legislation Limiting Payment of Costs by Unsuccessful Applicants Incentivises Discrimination Litigation
カリフォルニア州、児童労働に関する自主監査の開示を義務づける法律を制定
California Imposes Mandatory Disclosure Law for Voluntary Child Labor Audits
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